初めての歩き遍路――結願目指して継続中! by 30代OL

京都在住の社会人で、隔月で小豆島をひとり訪れては、八十八か所を少しずつ歩いてまわっています。
遍路を始めてもうじき1年ですが、あと3分の1ほどで結願します。
「女性が」「一人で」「歩いて」遍路しておりますが、こう三拍子もそろってしまうと、小豆島のみなさんにもまず心配され、次に「信心深いね」と褒められたり、“訳アリ”と思われるのか(笑)「よほどの決心やねぇ」と気の毒そうな顔をされます。
でも、私はもともと週末に思い立って出かけるような一泊二日の弾丸一人旅が好きで、また歩くことが好きで、小豆島に八十八か所があるのなら四国より楽そうだしやってみようじゃないか、という大変不純な動機で始めたのでした。(ごめんなさい。)
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初めての小豆島遍路のことを書きたいと思います。
訪れたのは2014年の4月初旬、桜はきれいだけど空はあいにくの小雨模様でした。
週末の休みを利用した1泊2日の行程で、土庄港に着いて霊場会総本院から土渕海峡を渡り海沿いの県道を北上、途中山岳霊場の笠ヶ滝に参って、尾形崎方面へ抜ける道のりでした。
まず最初に、遍路に必要なものを買うために霊場会総本院を訪れたのですが、金剛杖だけがこちらでは売ってなくて、土庄港前の旅館まで買いに戻ったり、実はちょっと出だしからくじけそうな気持ちでした。(笑)総本院では参拝の仕方も親切に教えてくださいましたが、ちょうど団体のお遍路さんと一緒になり、皆さんの乱れのない白衣の佇まいや朗々とした読経の声に圧倒され、信心のないものが遍路を始めてよいものだろうかとも思いました。さらに雨も降りだしたので、初日は予定をかなり短縮して早々に宿入りする有様でした。
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次の日も雨は降ったりやんだりを繰り返していましたが、気持ちを奮い立たせて出発しました。その日一日を最後まで歩くことができたのは、行く先々でたくさんの親切に助けられたからだと思います。
道行く人に「お疲れ様です」と言われることにまず驚き、また道によく迷いましたが、みなさん親切に教えてくださいました。
小豆島の札所は、地元の方が守っておられるような小さなお堂が多いのですが、春先だったためか、地元の方が詰めておられることがままありました。ジュースやお菓子、金柑などを持たせてくださったり、不慣れな読経も頼むと一緒にあげてくださいました。
無人の庵では、ひとりで金柑を含みながら一息ついて、海や桜を眺めつつ雨宿りさせていただきました。
札所には立派なお寺もありますが、私はどこかちょっと緊張してしまいます。やっぱり、その地元の人の手で守られたお堂がなんとなく好きで、その前でだと素朴に手を合わせることができました。
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途中、山岳霊場の72番奥の院笠が滝(小説「八日目の蝉」にも出てきます)も参りましたが、今思えばよく一人で登ったなぁと思います。
足元は岩がゴロゴロしていて、裏?から(71番滝ノ宮堂側から)登ったせいでしょうか、目立つ案内もあまりなく、ぽつりぽつりとある仏様が道しるべでした。振り返って看板を確認すると「この先マムシ注意」とか書いてあったりして(そんなん先に言うてよ!)…とにかくこわかったです。
洞窟にある荘厳な札所で、初めて鎖をつたって急斜面をよじ登ったりもしたのに、どちらかというとこわかった記憶しか残っていません(笑)
また小雨だったため、苔むした石の階段でうっかり滑って落ちました。金剛杖に結わえた鈴のひもが切れただけで済みましたが…信心深くない私でも、このときはさすがにお大師様が守ってくださったのだと思いました。現金なものです…。
でも、山を下りて、72番滝湖寺から笠ヶ滝を見上げたとき、「わたし一人でこんな山を越えてきたんだ」と驚かずにはいられませんでした。
この先、小豆島八十八か所では何度も山越えを経験するのですが、はじめに見上げて「無理じゃないかなぁ」と思った山も、なんとか越えることができています。
「ほととぎす 明日はあの山 越えていこう」と詠んだ山頭火の気持ちがちょっぴりわかるような…歩き遍路で、自分のちからを信じられるようになれたことが、私にはとてもうれしいことでした。
(なお、この日は私の先を歩くお遍路さんの集団があったので、道は大丈夫だろうと思っていました。情報が少ない場合や悪天候時の一人歩きはあまり無理なさらないように…)
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昼過ぎにやっと空も晴れてくると、どこまでも歩きたい気持ちになり、2日目は予定よりたくさん歩きました。
最後に、打ち止めとした札所の近くで会ったおばあちゃんが忘れられません。
行きがけに道を尋ねたのですが、押し車なのに札所の近くまで一緒に歩いてくれ、階段はさすがに登れないからと、札所の前で別れました。
でも、お参りを終えると、そのおばあちゃんが札所からバス通りまでの道で私を待っていてくれて、バナナと、次の遍路でのお賽銭にするようくしゃくしゃの千円札を渡してくれました。
それ以来、そのおばあちゃんの分までお祈りするようになりました。日々の買い物で多めに5円玉を集めるのも習慣になりました。
先日、先達のご住職に、お遍路は自利であり利他であると聞きました。
ただそのひと時に、自分と他人のことを祈るだけで、それで何かが変わるわけではないけれど、そういう気持ちを持ちながら日々を暮らしていきたいと思っています。
おばあちゃん、結願したらまた会いにいけたらいいな。
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誰もがこんな経験をできる訳ではないと思いますが、最初のたった2日間でも、私にはとても味わい深いものでした。
ぜひ勇気を出して、できればひとりで(安全に気をつけて!)、歩いてみてください。
春なら、他のお遍路さんたちにもお会いできて心強いと思います。
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京都府のOL
えみ
(2014年4月5日―6日 独り歩き遍路)

2015-02-09 | Posted in 体験談No Comments » 

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